第2回 西と東の駒場駅
河野書店の入る建物は、ホームから見ると、駅と接しています。お店とこの駅とは切っても切れない近しい関係。
その駒場東大前という駅名って、もともと大学の名前はなかったんじゃないかなと思ったのは、ボクは小田急線を使うので六会日大前駅を思い出したからです。
ちょうどボクが大学生になった頃ですが、路線図に目を向けるとヤヤヤ‥‥きのうまでと違う六会(むつあい)駅。名前が長くなっているじゃないですか。
六会日大前駅って、ずいぶん日大が幅をきかせたなアなんて思ったものです。ボクの母校は向ヶ丘遊園駅でしたが、今も同じ名前です。
小田急線には大学の名を冠した東海大学前駅があります。こっちの方も実はボクの少年の頃に、大根(おおね)駅から改称したことを最近になって知りました。(※1)
親戚のおじさんやいとこが東海大学で学びましたが、いとこは東海大学前駅までの運賃を払っていたけれど、おじさんの方は、厳密にいえば東海大学前駅までの運賃ではなくて大根駅までの運賃を払っていたのか。今度会ったら聞いてみよう‥‥なんて、実にどうでもよろしい話ではありまして。
京王井の頭線の駒場東大前駅の名前と向き合ってみて、ちょっとした疑いを持ったのです。ある時期から駒場駅に東大前と付けたんじゃあなかろうか。さて、結果は?
駒場の歴史を調べるのにとてもいい施設があります。中目黒駅から歩いて行ける目黒区めぐろ歴史資料館です。校舎を再利用したようで、入館すると少しだけ学生に戻った気持ちになります。
訪れた時はちょうど幼い娘さんの宿題で企画展を取材に来たらしい若いお母さんとそのまたお母さん(祖母)の3世代が楽しげに話していました。「おばあちゃん、これ知ってる?」「知ってるよ。これは○×の時に使ったの」「なにそれ。私も知らないわ」「何言ってるの。あなたの小さい頃使っていたよ」
常設展の目黒区年表は、通路壁面に大きく、長アく使って紹介していて参考になります。
目黒といえば寄生虫館が浮かびますが、開館は昭和28(1953)年とのこと、ちゃんと年表に入っています。
明治時代から20数年間にわたり「目黒競馬場」があったことも知りました。駒場はちょうど馬に縁のある地名ですが、競馬場まであった目黒の地。パカラッ、パカラッ!と馬の蹄(ひづめ)が地面を鳴らす音が聞こえます。(※2)
駒場周辺のことでは、日本近代文学館、都近代文学博物館が昭和42(1967)年に出来たことや、駒場公園が昭和50(1975)年に都から区へ移管されたことをメモりました。
展示場と同じ1階に資料室(体験学習・資料閲覧室)があります。カウンターの係の方にお尋ねすると、駒場に関連すると思しき資料をいくつも紹介して下さいました。
その中で昭和37(1962)年の目黒区地図を眺めていますと、ありゃりゃりゃ・・・?! 駒場東大前駅がないンです。
描かれていたのは「駒場駅」。これに東大前と名前を加えたのではないかとボクは思ってましたので当たっていた、と思いきや、数センチ近くに「東大前駅」とあるじゃありませんか。
2つの駅があったンです。
『写真集 目黒の風景100年』などの資料によれば、「駒場駅」は開業当初は「西駒場駅」と呼ばれていた。
西の駒場駅があれば東がある。
「東駒場駅」も存在し、その後「一高前(いちこうまえ)駅」となり、さらに「東大前駅」へ。
係の方が教えてくれました。その2つの駅がつながって、今の駒場東大前駅ができたンですと。西口側は、いわば昔の「駒場駅(西駒場駅)」側に近く、東口側は「東大前駅(東駒場駅)」側に通じる出入り口なのでしょう。
そういえば東口までに専用通路のようなちょっとした距離があるのは、昔の名残と関係あるのでしょうか。
京王井の頭線から河野書店を訪れる際は、駒場東大前駅の西口から行くのが早いですが、東口から行くと、段々の多い路地を進んで商店通りを行くのでまた違った景色を楽しめます。(駒場東大前駅は1965年開業とのこと)
(つづく)
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文責・板垣誠一郎
※1・・・1998年8月22日に六会日大前駅に改称。六会駅の開業は1929年4月1日。戦時中の1943年に日大農学部は開設されていて、長く駅前改称の要望はあったようだ。東海大学前駅は1987年3月9日より改称。大根駅は1927年4月1日開業。参考:生方良雄著『小田急の駅 今昔・昭和の面影』(JTBパブリッシング、2009年)には、小田急線各駅の来歴が紹介されている。
※2・・・「目黒競馬場」明治40(1907)年〜1933(昭和8)年。後、府中競馬場に移転。目黒区ホームページなどに解説あり。http://www.city.meguro.tokyo.jp/gyosei/shokai_rekishi/konnamachi/michi/rekishi/tobu/keiba1.html
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