第1回 駒場東大前駅の商店通りへ
江戸のころには将軍家の御鷹場として知られ、明治から練兵場が造られもした駒場の地。今では東京大学駒場キャンパスや日本民藝館や日本近代文学館が建つ知的で閑静な地域。駒場東大前駅からすぐの河野書店で一息つきながら、東京の昔を探しに出かけましょう。
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きっかけがあり、駒場東大前駅の西口から商店が並ぶ通りを歩いて見つかる古書店、河野書店を訪ねました。
店主の河野高孝さんがおつれあいとお店を開いたのは1983年とのこと。ことしで丸35年を迎えるお店です。
通りからお店入り口までのスペースに、古本屋ならではの安売り棚がいくつも置かれ、さながら青空市といったところです。
店に入ると目前に対面する番台カウンターと洋書が目に入ると思います。それと、荷物を置けるようにと台も用意されています。
お客は右か左か行き先を選ぶのですが、ぎっしり並ぶ本の背がおりなす色合いから右手はどうも洋書ばかりだぞという勘が働き、スペースからしてもゆとりのある左手へと向かいました。
一段下りたその広間は書棚で仕切られていて、その並びを窓側から順に進むうち、学術書や文芸、文庫と続いていたら、やはりここでも洋書の占める割合にたじろぎ、すっ飛ばしまして、好みの芸能関連を見つけて一安心、背のタイトルを追いかけます。
棚に向かい合っていると夕方過ぎの平日月曜日、先ほどの入り口から若い声の人が入って来ました。
応じる河野さんの声がこちらまで穏やかに届きまして、どうやら近々行われる学園祭の準備のために入り用になったので、文具用品店を探しているらしい。
河野書店の横はコンビニですが、学園祭で必要とする文具は手に入らなかったのでしょう。
表の通りは住宅も並びながらけっこう色々とお店が続いていそうな気がしましたが、文具用品店はこの通りでは見つからないヨと教えているようです。
今どき文具用品かぁ。
駒場東大前駅から商店並ぶ通りに縁のないボクですが、自分が学生の頃の20年前と現在とで、一般に駅前商店街のお店の顔ぶれは変わってきているだろうナという実感があります。
仕事先の都心でも文具用品を扱うお店は少なくなりました。FAXかネットで発注する文具は、場合によっては当日に届いてしまう。それに慣れるとそこに居ながらにしてすぐに届いてほしいというムードが頭に漂います。
文具用品はコンビニでも品揃えがあります。几帳面に小分けされた鉛筆や消しゴム、ノートやメモ帳、ノリや付箋紙を見たら、文具用品を専門にお店を営む難しさを想像出来ます。100円ショップも文具用品は充実しています。
たまたま学園祭がきっかけで、先ほどの人は商店通りに文具用品店はないことを知った。あの後、彼はどうしたか。
幸いにもここは、渋谷や下北沢にも近い都心の街ですから、文具用品店を探す選択肢は残されているでしょう。
むしろここは、渋谷や下北沢に近いからこそ、何でもかんでもなくても済むことろとも言えそうです。
近年、店主河野さんは毎日の営みをブログ「河野書店NEWS」で公開しています。お店のようすはまずこちらをご覧いただくことをお薦めいたします。
河 野 書 店 kono-shoten 〒153-0041 東京都目黒区駒場 1-31-6 TEL:03-3467-3071 FAX:03-3467-3071 ホームページ http://www.kosho.ne.jp/~kono/ お店の場所 http://www.kosho.ne.jp/~kono/access.html
・・・さてボクですが、河野書店を訪れたことがきっかけで、駒場東大前駅周辺にゆかりのある古い東京の風景が見つかる話を探すことにしました。
(つづく)
→ 第2回
文責・板垣誠一郎
〈2018年1月配信開始!〉 河野書店のあたり駒場東大前
- 第1回 駒場東大前駅の商店通りへ
- 第2回 西と東の駒場駅
- 第3回 開業の1983年
- 第4回 由良君美の発信
- 第5回 駒場を通る
- 第6回 本郷から駒場まで
- 第7回 駒場の木陰(1)─旧前田邸・駒場公園─
- 第8回 駒場の木陰(2)─日本近代文学館と高見順闘病日記─
- 第9回 駒場の木陰(3)─石田波郷が詠んだ駒場の町─
- 第10回 蔵書の引き取り
投稿者: 東京のむかしと本屋さん編集部
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